お客様の声
通信販売会社「ライトアップショッピングクラブ」
コラボレーションストーリー
ブランド力と確かな技術力が要 老舗時計メーカーが生んだビジネスチャンス
創業140周年を迎えたセイコーには、法人からの個別の依頼に合わせ、オリジナル時計を製造するサービスがある。
今回、創業50周年を迎えた通信販売会社ライトアップショッピングクラブが製作を依頼し、「ライトアップショッピングクラブ50周年記念腕時計」が生まれた。
この挑戦は、両社の新しい顧客開拓、そして新しいビジネスモデルへとつながった。
そんなエポックメイキングな取り組みを、セイコーウオッチの古林祐輝とライトアップショッピングクラブの山田竜樹、2人のキーパーソンが語った。
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【モデルにしたのは、時計史にも残る銘品】
―今回のライトアップショッピングクラブ50周年記念腕時計を企画した背景を教えてください。
山田 セイコーさんとは20年以上のお付き合いがあり、10年前も当社の創業40周年の記念ウオッチを製作してもらいました。おかげさまでお客様からも好評でロングセラー商品として人気を博していました。50周年記念腕時計を作るにあたっても、ぜひセイコーさんにお願いしたいと考えました。
古林 私たちは法人様からの依頼を受け、オリジナル時計を製造しています。ライトアップさんからまたご指名していただいたのはすごく光栄です。しかも、今回のご依頼は山田さんから明確なコンセプトを提示していただいたので、当社としても提案しやすかったですね。
山田 当社のメイン顧客が腕時計に求める最大の機能は「視認性」です。つまり時間を表す文字板の数字が見やすいということ。そこでデザインは数字にこだわり、ユニバーサルデザインなどいろいろとアイデアを出しました。
そして最終的にたどり着いたのが視認性に優れた鉄道時計でした。セイコーさんが国産初の鉄道時計を発売された歴史があることも知っていたので、これをデザインモチーフにできないかと古林さんにご相談しました。
古林 当社が現在発売している鉄道時計をオマージュできないかという相談でした。鉄道時計は当社の時計史にも残る銘品ですし、山田さんの着想も非常に明確だったので、こちらからのご提案もスムーズに進めることができました。
――腕時計製作で配慮した点や苦労したことはありましたか?
古林 一番の課題はサイズの問題です。懐中時計を腕時計のサイズに小さくすることで、数字の視認性が損なわれないかという点。しかし、数字だけを大きくすると全体のバランスが崩れてしまうので、まずはそこを配慮しました。
山田 数字のサイズだけでなく文字板外周のベゼルの幅が異なるいくつものデザイン案をご提案していただき、鉄道ファンのみならず時計愛好家を魅了したセイコーの鉄道時計のオマージュにふさわしいデザイン案に絞り込んでいきました。
古林 ベゼルの幅を広くするとスポーティになり、狭くするとクラシカルな印象を与えることになります。数字の大きさだけでなく、ベゼル幅のバランスも山田さんと一緒に決めていきました。
何度かのすり合わせを経て、鉄道時計のアラビア数字を活かしたうえに小さなサイズでも視認性に優れた時計にすることができました。
山田 さらに私から50周年記念モデルを電池交換の必要がないソーラーウオッチにしたいという要望を出しましたが、それについても創意工夫を凝らして対応していただきました。
古林 一般的にソーラーウオッチは、文字板のソーラーパネルを目立たせないように文字板に装飾を施すことが多く、スポーティになりやすいという特徴があります。しかし、それではクラシカルな鉄道時計のイメージを再現できない。
そこで、シンプルな白い文字板でありながらも、ソーラーパネルを目立たせないアレンジをすることで、鉄道時計のクラシカルさを表現できました。
【「この完成度なら必ず売れるという自信があった」】
――時計製作は、デザイン決定後に試作品づくり、量産という流れになるのでしょうか?
セイコーウオッチの古林祐輝
古林 そうです。時計自体の製作は試作品づくりが約2カ月、量産が約4カ月、合計6カ月程度かかります。デザイン作成や、サンプル確認などをふまえると、企画のスタートから納品まではおよそ1年を要します。今回の50周年記念モデルもだいたい同じような製作期間です。
ただし、今回は鉄道時計のオマージュということで針の形にもこだわったため、いつもとは異なる工程が発生しました。
時針と秒針については、鉄道時計と近しいデザインの型があったので問題ありませんでしたが、分針については近い型が残っていないために、新たに型を起こさなければなりませんでした。
山田 私としてはどうしても鉄道時計のイメージを再現したかったので、分針についても新たに型を起こして生産していただきました。
製造や検証に時間を要し、難しい調整をお願いしてしまいましたが、この完成度なら必ず売れるという自信もありましたから。
事実、発売から1か月半が過ぎましたが予想を上回る売れ行きです。初回の生産は完売に近い状態で、次の発注も前倒しでお願いしたいと考えています。
――売れ行き好調ということで、お客様の反応も上々のようですね。
ライトアップショッピングクラブの山田竜樹
山田 当社の中心顧客であるシニア世代の方だけでなく、幅広い年代の方からオーダーが入っています。Twitterでは多くの方々につぶやいていただき、今まで当社のターゲットではなかった若い年代の方にもご購入いただいています。
また、銘品であるセイコーの鉄道時計をオマージュした商品ということで、メディアの方々にも取り上げていただくなど反響も大きいですね。
鉄道時計というノスタルジックで文化の香りがする商品という点も話題性がありましたから。また、これまで当社は売り上げの8割がカタログ販売でしたが、今回の50周年記念腕時計は半分がWebでの売り上げです。
そういう意味では、新しいビジネスの在り方が見えたエポックメイキング的なプロジェクトになりました。
古林 顧客層の拡大という点では当社も同じです。ライトアップさんとの協業により、これまで出会うことのなかった顧客層との接点が数多く生まれています。今回の取り組みによって、両社とも新たな顧客開拓ができる利点を改めて感じています。
山田 今回のプロジェクトを通して改めて感じたのは、セイコーさんの歴史の深さです。鉄道時計という逸品がなければ、今回の企画も生まれませんでしたから。
古林 私も当社の先人たちが技術の粋を集めて創り出した銘品を、形を変えて世に送り出すことができて感慨深いものを感じています。
【長い歴史に育まれたブランド力と技術力があるからできる提案】
――最後に現在のオリジナルウオッチの活用例や、今後の展望についてもお聞かせください。
古林 ライトアップショッピングクラブさんのように商品として販売する時計だけでなく、社員様や取引先様に記念品として贈呈する時計の製作を依頼されるケースも多いです。
こちらも希少価値が生まれ、贈られた方々には大変喜ばれています。また、最近ではアニメやゲームコンテンツのキャラクターとのコラボレーションウオッチや、有名セレクトショップから依頼を受けて製作したオリジナルウオッチも数多くあります。
当然、セレクトショップですからファッショナブルな時計の製造が求められます。加えて、「セイコー」がもつブランド力と確かな技術力が相まってエンドユーザーの方々にご好評いただいています。
今後については先ほど言ったように当社には長い歴史の中で育んできたブランド力や技術力があります。これを最大限活用し、お客様の細かいご要望も実現できるようなオリジナルウオッチの提案を心がけたいと考えています。
山田 私も今回の体験から、次の新しいアイデアがいくつか浮かんでいます。第2弾、第3弾の商品を創り出したいですね。
古林 ぜひ、よろしくお願いします(笑)。新しいロングセラー商品を一緒に作りたいですね。
Promoted by Seiko Watch Corporation / Text by Tetsuji Hirosawa / Photographs by Shota Naka / Edit by Hirotaka Imai